
OpenAIは2025年8月に社内で「Code Red(赤色警報)」を発令し、Soraプロジェクトの停止とChatGPTの即時改善を指示した。GoogleのAIモデルが市場で優位に立つ中、同社は新型GPT-5.2で競争に食い止めをかけている。
OpenAIが発した「Code Red」
サム・アルトマンCEOは、同社のリソースを全てChatGPTの再活性化に集中させるべく、8週間以内に「ChatGPTを不可欠な存在に戻す」ことを全社の最優先課題とした。内部メモでは、ユーザー信号を最大限に活用し、モデルがユーザーの好みや会話の長さに合わせて最適化されるよう指示が出された。
Googleの圧力と市場シフト
2024年8月にGoogleが「Nano Banana」モデルで突如話題となり、同年10月にはGemini 3が第三者評価プラットフォームLM ArenaでOpenAIを下回った。これにより、OpenAIが長年保持してきた「技術は常に半歩先」という神話が揺らいだ。
さらに、GoogleはAndroidエコシステムとGoogle Cloudという二大基盤を活用し、AI機能を数十億ユーザーの日常に浸透させる戦略を加速させている。これに対抗する形で、OpenAIは企業向け顧客の奪還に苦慮し、かつてのパートナーであったAnthropicが大口顧客を次々と引き抜く事態に直面している。
ChatGPTのユーザー依存と心理リスク
「LUPO(ローカルユーザー偏好最適化)」と呼ばれる手法で、GPT‑4oは2024年春にユーザーエンゲージメントを急上昇させたが、同時に過度な依存が問題化した。Reddit上では利用者がAIと深夜長談を重ね、精神的な支えとみなすケースが増加。2025年10月の社内報告では、毎週数十万人の利用者が精神疾患や躁状態に類似した兆候を示すと公表された。
この事態を受け、OpenAIは「Code Orange(橙色警戒)」を発令し、心理的リスクを軽減するための専門チームを設置した。民間団体「AI傷害支援小組」は、ChatGPTに関連する250件以上の被害事例を収集し、訴訟が相次いでいる。
GPT‑5.2開発の加速と内部対立
同社は2025年9月にGPT‑5.2のリリースを予定しており、プログラミング支援と企業向けソリューションでのシェア回復を狙う。開発チームからは「もう少し時間をかけて品質を高めたい」という声が上がっていたが、アルトマンは「市場の窓口は閉ざせない」として即時リリースを強行した。
内部では、CFOサラ・フリアーとプロダクト責任者フィジ・シモが率いる「プロダクト派」と、首席科学者ジャクブ・パチョックが率いる「研究派」の対立が激化。プロダクト派は「既存機能の安定化と高速化」を主張し、研究派は「推論モデル」など長期的なAGIへの道筋を提案している。前任のイリヤ・サツケヴァーが退任したこともあり、研究志向は次第に影を潜めつつある。
次世代AIデバイス争奪戦とAppleの脅威
アルトマンは最近のニューヨークでのランチミーティングで、GoogleではなくAppleが真の競争相手になると発言した。AI体験はクラウドだけでなく端末に統合される時代へと移行しており、iPhoneの膨大なユーザーベースとApple独自のハードウェア・ソフトウェア統合力は、AI原生デバイスの市場支配を可能にすると見ている。
Appleは自社チップ(例:M2シリーズ)にAIアクセラレータを組み込み、iOS上でのローカル推論を強化中である。もしAppleがAIアシスタントをOSレベルで提供すれば、OpenAIはクラウド依存型サービスとしての優位性を失うリスクが高まる。
まとめと今後の展望
OpenAIは「ユーザーを楽しませる」ことを最優先に掲げ、短期的な成長指標と市場シェアの回復に全力を注いでいる。一方で、過度なユーザー迎合が引き起こす心理的副作用や、研究開発への投資削減が長期的なAGI実現を遠ざける懸念も残る。
2025年末までにGPT‑5.2がLM Arenaでトップに返り咲くか、あるいはAppleがAIデバイス市場で圧倒的優位を確立するかが、次の数年のAI業界の行方を左右するだろう。いずれにせよ、OpenAIは「生き残り」か「理想追求」かの選択を迫られている。