2nm製程の価格は想定より抑えられた
台湾の半導体受託製造大手、TSMC(台湾積体電路製造)が2nmプロセスの単位ウェハ価格を公表した。報道によれば、2nmウェハの価格は約30,000米ドルで、現行の為替レート(約1米ドル=7.13人民元)で換算すると約21.4万人民元になる。これは、直前に発表された3nmプロセス(2.5万〜2.7万米ドル)と比較して、約15%〜20%高い水準である。
市場の噂と実際の乖離
2nmへの価格上昇が50%に達するという噂が流れたが、TSMCはそれを否定し、実際の上昇幅は10%〜20%にとどまると説明した。業界関係者は、過度な価格上昇が顧客の投資意欲を削ぐ恐れがあることから、慎重な価格設定が求められていると指摘している。
先行する価格改定とその範囲
TSMCは来年、3nm、4nm、5nm、7nmといった先進プロセス全体に対して価格改定を実施する方針を示した。改定幅は一桁のパーセンテージに収まる見込みで、具体的な上昇率は顧客との取引規模や協力関係に応じて個別に決定される。
双方向のコスト調整メカニズム
同社は価格戦略として、装置・材料サプライヤーに対して10%〜20%のコスト削減余地を要求すると同時に、製造側にも一部コスト負担を転嫁する双方向調整を採用している。これにより、先端プロセスのフルロード稼働を維持しつつ、成熟プロセスの稼働率がまだ余裕を持っている現状を活かすことができる。
2nmプロセスの技術的背景と市場投入時期
2nmプロセスはN3P、N3Eといった複数の技術ノードを含み、主に高性能コンピューティング(HPC)や人工知能(AI)向けチップに供給される予定だ。TSMCの内部データによれば、量産は2025年下半期に本格化し、最初の出荷は高性能CPUやGPU、AIアクセラレータ向けになる見込みである。
主要顧客の動向
アップルは2nmプロセスを採用したA20チップを開発中で、iPhone 18 Proシリーズに搭載される可能性があると報じられている。また、AMDや高通、聯発科(MediaTek)も2025年以降に2nmへの移行を計画しており、2026年には月産10万枚規模の出荷が見込まれる。
価格安定化が示すTSMCの戦略的姿勢
先端プロセスの価格が安定化したことは、TSMCが技術イテレーション期において、サプライチェーン全体でコスト削減を図りつつ、顧客の価格不安を緩和しようとしていることを示す。段階的な価格上昇は、同社が研究開発投資を継続し、次世代プロセス(3nm以降)の開発資金を確保するための手段でもある。
今後の見通しと課題
2nmプロセスの量産が本格化すれば、AIチップやデータセンター向けの需要が急増し、半導体市場全体の構造変化を促す可能性がある。一方で、装置供給のボトルネックや材料コストの上昇リスクは依然として残っており、TSMCはサプライヤーとの協調をさらに深化させる必要がある。
以上のように、TSMCは価格上昇率を抑えつつ、先端プロセスの供給体制を整備している。顧客は価格面での不安が和らげられ、2nmへの移行が加速することが期待される。