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2025/11/04

トヨタが警戒、比亚迪(BYD)の新型Kカー『RACCO』が日本市場に本格参入

背景:トヨタと中国勢の競争構図

2025年に開催された日本モビリティ・エキスポで、トヨタ自動車の社長・豊田章男は、同社が世界で販売した車両が1月~9月で6,440,200台に上り、ドイツ・フォルクスワーゲンを2,840,000台差で抜いて世界トップであることを報告した。しかし同時に、同社は「今こそ新たな世紀が必要だ」と語り、国内外で台頭する中国メーカーへの警戒感を示した。

比亚迪(BYD)の急成長

中国の電気自動車大手・比亚迪は、過去1年で海外販売台数がほぼ2倍に拡大した。2025年上半期だけで、前年全年度を上回る販売実績を記録し、9月の輸出台数は71,256台で、前年同月の30,512台に比べ133.5%増、2022年同月比では821.1%の伸びを示した。

地域別に見ると、EU市場での販売増加率は560%に達し、ブラジルでは2025年上半期に47,000台を販売し、前年同期比45%増となった。タイ市場でも比亚迪は電動車と純電車の売上トップを独占している。

日本市場への本格的な攻勢

比亚迪は日本市場にすでに20年の歴史を持ち、電動バスで約70%のシェアを占め、フォークリフトや商用車でも一定の実績がある。2023年に乗用車市場へ本格参入し、ATTO 3(元PLUS)や海豚(ハイルーン)を投入したが、価格は中国本土の約2倍で、ATTO 3は4,180,000円(約19.3万元)と高額だったため、販売は限定的だった。

今回比亚迪が新たに投入するのは、Kカー(軽自動車)規格に合わせた特供車「RACCO(海獭)」である。日本のKカーは幅1.48 m未満、長さ3.4 m未満、高さ2.0 m未満というサイズ基準を満たすことで税制優遇を受け、国内新車販売の約4割を占める重要セグメントだ。

RACCOの仕様と価格

RACCOは箱型デザインを採用し、四輪四角構造で室内空間を最大化。前照灯は二層C字型、車頭下部に2基のフォグランプを配置。側面はサスペンション式ルーフ、前方は視界死角を減らすダブルAピラーを採用し、充電口は右前フェンダーに設置。ドアは電動スライド式で、後部座席はプライバシーガラスを装備。

インテリアはシンプルな貫通型レイアウトで、センターハンドル箱は省略。加熱機能付きの3本レースステアリング、タッチスクリーン式の中控画面とデジタルメーターが標準装備される。バッテリーは20 kWhパックで、WLTCモードで走行可能距離は180 km、最大出力100 kWの急速充電に対応。

価格は約2,600,000円(約12万元)と見込まれ、同クラスの国内トップモデルである日産「Sakura」(価格253.66万円、約11.68万元)とほぼ同等の価格帯になる。

日本のKカー市場と電動化の余地

2024年の国内Kカー販売トップは本田のN‑Boxが206,300台、鈴木のSpaciaが165,700台、鈴木のHustlerが92,800台で、3社合わせて約30%のシェアを占めている。電動化が進む中、日産と三菱は純電動Kカー「Sakura」や「eK」などを投入し、Sakuraは年間約70,000台を販売しているが、Kカー全体の電動化率は3%未満にとどまっている。

この低い電動化率は、比亚迪にとって大きな成長余地を示す。比亚迪は「刀片電池」技術でバッテリーパックの体積を削減し、乗員スペースを広げると同時に、ナビや車載連携機能の高度化を図ることで、価格競争力だけでなく付加価値でも差別化を狙っている。

既存メーカーの懸念と市場の反応

日本メディアは、比亚迪の低コスト一貫生産体制が価格競争を激化させると指摘している。日経新聞は「比亚迪は電池から車体まで自社で完結できるため、価格面で大きな優位性を持つ」と報じた。一方、鈴木自動車の社長・鈴木俊宏は「比亚迪の参入は大きな脅威だが、価格戦争は避け、健全な競争を望む」とコメントした。

日本の自動車市場は、輸入車に関税がかからないものの、国内ブランドへのロイヤリティが極めて高く、2024年の乗用車販売上位10位はすべて国内メーカーで占め、海外ブランドの最高販売台数はメルセデス・ベンツの53,200台にとどまる。イーロン・マスクも「日本ではシェアが極めて低く、メルセデスやBMWと同等のシェアを持つべきだが、現実はそうなっていない」と嘆いている。

今後の展望

比亚迪はRACCOに続き、プラグインハイブリッド車「海狮 06 DM‑i」も日本で販売する計画で、2027年までに日本市場に7〜8モデルの純電動・プラグインハイブリッド車を投入する方針だ。技術的・価格的優位性はあるものの、消費者のブランド志向や「空気を読む」文化が販売拡大の壁となる可能性が指摘されている。

トヨタは依然として世界最大の自動車メーカーとしての地位を保ちつつ、国内外の新興勢力に対抗するため、サービス理念「TO YOU」の刷新や、電動化・自動運転技術への投資を加速させている。比亚迪の本格的なKカー参入は、トヨタにとっても日本の軽自動車市場全体にとっても、次の10年を左右する重要な転換点となりそうだ。

出典: https://www.ifanr.com/1643202