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2025/10/16

TSMC、2nmウェハ価格を50%引き上げ Qualcommはサムスンを第二候補に検討

TSMCが2nmウェハの代工価格を大幅に引き上げ

台湾の半導体受託製造大手、TSMC(台湾積体電路製造)は、最先端の2nmプロセスにおけるウェハ単価を50%引き上げる方針を発表した。韓国メディアChosunBizが10月16日付で報じたところによると、同社は既にN3P(3nm相当)プロセスの価格改定を実施しており、これに伴いQualcomm(クアルコム)やMediaTek(メディアテック)といった主要顧客のモバイル向けチップ価格がそれぞれ約16%と約24%上昇した。

この価格上昇は、顧客の利益率に直接的な圧迫をもたらすと指摘され、両社は「価格改定の流れに不満」を示している。特に、Qualcommは次世代Snapdragonプロセッサの製造コストが上がることで、製品価格や販売戦略の見直しを余儀なくされる可能性がある。

米国拠点のコスト構造と人材課題

TSMCはアリゾナ州フェニックスに新設した工場でも、設備の最適化や熟練技術者の確保に苦慮している。現地での生産コストは、台湾本土の工場に比べて30%以上高くなると見込まれ、4nmプロセスでさえ同様のコスト差が指摘されている。人手不足と設備稼働率の低さが、価格交渉においてTSMC側の立場を弱める要因となっている。

Qualcommのサプライチェーン戦略:サムスンを第二選択肢に

QualcommのCEO、クリスティアーノ・アモンは「ウェハ代工に関してはできるだけ選択肢を残す」と述べたが、同時にIntelが18Aプロセスで量産に成功したものの、現時点では同社を選択肢に入れていないと付け加えている。世界で3nm以下の量産が可能なのはTSMC、Samsung(サムスン電子)およびIntelの3社に限られる中、Qualcommはサムスンを「バックアップリスト」に加える可能性が高いと業界は見ている。

サムスンは米国テキサス州に20年近くにわたる代工実績を持ち、現地での生産体制が成熟している点を強調している。TSMCの米国工場が抱える人材・設備の課題に対し、サムスンは「ローカライズされた生産体制が優位」と評価され、次世代Snapdragonの受注獲得を狙ってTSMCと暗黙の競争を繰り広げている。

中国市場への影響と背景

中国本土の半導体産業は、先端プロセスにおいて依然としてTSMCやサムスンに大きく依存している。中国政府は自国のファウンドリ技術の立ち上げを支援しているものの、7nm以下の量産は未だ実現できていない。したがって、TSMCやサムスンが価格を引き上げた場合、中国のスマートフォンメーカーやIoTデバイスメーカーも間接的にコスト上昇の影響を受けることになる。

また、米中技術摩擦の影響で中国企業が先端装置の輸入に制限を受ける中、代工価格の上昇は中国国内の製品価格競争力をさらに低下させる懸念がある。これに対し、中国の大手ファウンドリは、コスト効率の高い14nm・10nmプロセスでのシェア拡大を図り、TSMCやサムスンの価格上昇に対抗しようとしている。

今後の展開と業界の見通し

TSMCは2nmプロセスの価格改定を通じて、先端技術への投資回収を加速させる意図があると見られる。一方で、QualcommやMediaTekは価格上昇分を製品価格に転嫁するか、代替サプライヤーへのシフトを検討するかの選択を迫られている。

サムスンは米国でのローカル生産を武器に、Qualcommの次世代チップ受注を狙う姿勢を強めている。もしサムスンが受注に成功すれば、TSMCの価格交渉力はさらに揺らぐ可能性がある。

中国市場においては、先端プロセスの価格上昇が製品コストに波及し、国内メーカーは価格競争力の維持と技術自立の両立を求められることになるだろう。業界関係者は、各社の価格戦略と供給網の多様化が、今後の半導体エコシステムに大きな影響を与えると見ている。

出典: https://www.ithome.com/0/889/973.htm