
スマートフォンの計算写真技術が急速に進化し、2025年にはカメラ市場でも大きな変化が起きています。ソニーは新機種 A7M5 で、コストと性能の狭い均衡点を狙い、動画制作と高速連写の両立を目指しました。
背景:スマホとカメラの競合構造
過去数年、スマートフォンはスタック型センサーを搭載し、瞬時の撮影と高速データ転送を実現してきました。一方、フルサイズのプロ向けカメラは従来の背面照射型(BSI)センサーが主流で、データ処理速度がボトルネックとなっていました。特に 4K60p の無裁切録画や 30fps の高画質連写は、従来機種では実現が難しい課題でした。
部分スタック型センサーの採用
ソニー A7M5 の最大の技術的特徴は、3300万画素の「部分スタック型」CMOS センサーです。これは、従来の BSI センサーの構造をベースに、センサー周辺に高速キャッシュ領域を追加したものです。フルスタック型センサーが高価でフラッグシップ機種に限られるのに対し、部分スタックはコストを抑えつつデータ転送速度を大幅に向上させます。
この構造により、A7M5 は 30fps の連写時でも 14bit の RAW データをロスなく出力でき、従来機種が 12bit に落とさざるを得なかった点と比べて色彩情報の保持が格段に向上しています。
動画性能の飛躍
動画規格では、7K 超サンプリングを経た 4K60p 無裁切録画が可能となり、A7M4 で見られた 60fps の裁切視野は解消されました。さらに、A1 II と同等の AI オートフォーカスチップを搭載し、単体での動画撮影実用性が大幅に向上しています。
画質とノイズのトレードオフ
スタック型センサーは高速読出しに伴い、特定の ISO でダイナミックレンジが低下する傾向があります。A9 系列で見られたように、ISO 100 基準で約 0.5〜1 桁のダイナミックレンジ低下が報告されています。A7M5 でも同様に、低感度から中感度域での信号対雑音比(SNR)がやや低下し、暗部持ち上げ時にノイズが目立つ可能性があります。
実用面での改善点
バッテリーは 750 枚撮影可能と向上し、長時間の動画撮影や連写に対応しています。液晶は 3.2 インチの四方向可動タッチスクリーンを採用し、操作性が向上。接続端子は従来の Micro‑USB を廃止し、デュアル USB‑C ポートへと刷新しました。
カードスロットは「SD/CFe 混合スロット+純 SD スロット」の構成で、CFe カードの高速連写バックアップは利用できませんが、ソニー独自の「精密刀法」によるデータ管理が可能です。
価格とエコシステム
本体価格は 17,999 元(約 30,000 円)で、フルサイズミラーレス機としては競争力のある設定です。ソニーの強みは何と言っても E カ口レンズ群の充実にあります。自社の G マスターシリーズは高性能を誇り、Sigma、Tamron、Viltrox などのサードパーティ製レンズも豊富に揃っています。これにより、予算に応じたレンズ選択が可能で、長期的な投資価値が高まります。
例えば、同価格帯の Canon RF6 のレンズは高価でサードパーティの選択肢が限られますが、A7M5 では中古市場やサードパーティ新品で高品質レンズを低コストで入手できる点が大きな魅力です。
総合評価と今後の展望
A7M5 は「速度」と「画質」という相反する要素を、部分スタック型センサーと AI チップの組み合わせでバランスさせた機種です。高速連写と高ビット深度 RAW、7K 超サンプリング 4K60p 録画という点では大きな前進を示していますが、ダイナミックレンジやノイズ面での妥協は依然として残ります。
しかし、カメラ本体だけでなく、レンズエコシステムやバッテリー、操作性といった周辺要素が総合的に優れているため、プロフェッショナルだけでなく、映像制作を本格的に始めたいクリエイターや小規模スタジオにとっては、コストパフォーマンスの高い選択肢と言えるでしょう。
長期的に見れば、カメラ市場はスマートフォンとの技術競争が続く中で、ハードウェアとソフトウェア(AI)を融合させた製品が主流になると予想されます。A7M5 はその流れの先駆けとして、次世代の映像制作ツールの姿を示しています。