2025/11/04

Douyin(抖音)公式アプリ「AI抖音」の機能と利用実態を徹底解説

はじめに – AI抖音とは何か

中国の大手ショート動画プラットフォーム「抖音」(日本名:Douyin)が、従来のエンターテインメントアプリとは別に「AI抖音」というツール系アプリを提供していることが、国内メディアでもほとんど取り上げられていなかった。2023年10月中旬にリリースされたこのアプリは、ダウンロード数が約4,000万件に達しているものの、同社の主力アプリ「抖音」の利用者数に比べればごく一部に留まる。

AI抖音の基本設計 – 「会考える」検索ツール

従来の抖音は縦スクロールで動画を次々に閲覧し、ユーザーが自然にコンテンツにハマる設計が特徴だ。一方、AI抖音は画面下部のタブメニューを廃止し、中央に大きな入力欄とロゴだけを配置したシンプルなインターフェースとなっている。アプリサイズは約800 MBで、これは日本国内で広く利用されているメッセージングアプリ「微信」よりもやや大きい。

この入力欄は単なる検索ボックスではなく、対話型のAIエージェントとして機能する。ユーザーがキーワードを入力すると、まずテキストで要点をまとめた回答が提示され、続いて「深度解答」ボタンを押すと、AIが検索範囲を抖音内外の全ウェブに拡大し、情報源を明示した詳細な考察を提供する。

主な機能 – AI検索、タスクアシスタント、AIノートブック

1. AI検索と深度解答

AI抖音の核となるのは、従来のキーワードマッチングに頼らない「深い理解」だ。たとえば「苏丹红」(食品添加物の赤色染料)と入力すれば、まず簡潔なテキスト要約が表示され、続いて「深度解答」を選択すると、AIは複数の信頼できるメディア記事を引用しながら、問題の背景や影響まで掘り下げて説明する。

2. タスクアシスタントによる調査支援

ユーザーが「十五全运会の見どころ」や「西安での3日間旅行プラン」など具体的な課題を入力すると、AIはまずアウトラインを提示し、必要に応じて質問を重ねて内容を精緻化する。タスク開始後は、抖音内検索と全網検索を同時に走らせ、得られた動画やテキスト情報をインタラクティブなレポートにまとめる。レポート内の各項目はクリック可能で、関連動画や公式情報へシームレスに遷移できる。

3. AIノートブックで動画を知識資産化

AI抖音は「观看历史」「我的收藏」「我的点赞」に加えて「AI笔记本」という独自の機能を提供する。ユーザーが任意の動画をノートブックに追加すると、AIが自動で内容を分析し、テキスト要約や画像化したインフォグラフィックを生成する。長時間の講演動画や複数のVlogをまとめて一つの「知識カード」に変換できる点が、従来の単なるブックマーク機能と大きく異なる。

利用シーンと実際の体感 – 「探す」体験の変化

従来の抖音は「刷(スワイプ)して見る」ことが前提で、ユーザーはアルゴリズムが提示する動画に流されやすい。一方、AI抖音は検索結果をテキストで先に提示し、必要に応じて動画で補完するという「探す」プロセスを支援する。たとえば旅行先の情報を調べる際、AIが提供するテキスト要約だけで全体像を把握でき、興味がある箇所だけ動画を見るという効率的な流れが実現できる。

また、AI抖音は回答の最後に「点赞」ボタンを設けず、唯一のフィードバックは「踩」(低評価)だけに限定している。これはユーザーがコンテンツの質を評価するよりも、AIが提供する情報そのものの正確性や有用性に焦点を当てさせる設計意図と考えられる。

今後の展望 – 抖音エコシステムにおけるAIの位置付け

2024年に入ってからは、抖音本体アプリにもAI検索や深度解答機能が段階的に統合されつつあるが、AI抖音の「ツール」属性は依然として独立した形で提供されている。これは、抖音が単なるエンタメプラットフォームから、情報検索・知識整理までを網羅する総合的なデジタルツールへと進化しようとしていることを示唆している。

AI抖音は、検索エンジン、動画プラットフォーム、ノートアプリという三つの機能を一体化したハイブリッドサービスであり、ユーザーが「何を探すか」から「どのように活用するか」までを一つのアプリ内で完結できる点が大きな特徴だ。今後、AI技術の精度向上とともに、回答のカスタマイズ性やマルチモーダル対応が進めば、情報過多の時代における新たな情報取得手段としての位置付けがさらに強まるだろう。

まとめ

AI抖音は、抖音公式が提供する検索支援ツールで、AIによる深度解答、タスクアシスタント、AIノートブックという三本柱で構成されている。ダウンロード数は4,000万件、サイズは800 MBと、エンタメ向けアプリとは一線を画す設計が特徴だ。ユーザーは動画を「刷る」だけでなく、AIが先に要点をまとめてくれることで、効率的に情報を取得できる。抖音が今後どのようにAI抖音と本体アプリを統合し、ツールとしての価値を高めていくかが注目される。

出典: https://www.ifanr.com/1643180