中国のハイテク大手各社は、金融サービスプロバイダーではなく技術プロバイダーとしての地位を確立しようと力を入れています。
最近、Alipay HKとフィリピンのGCashによる香港からフィリピンへのブロックチェーン送金が3秒で実現したことはその一例です。Ant Financialが立ち上げた資産運用プラットフォームも、企業への資金提供を支援するAI搭載の投資ツールを公開しました。Tencentも最近、大手銀行数社と提携し、顧客管理の金融クラウドサービスを提供しています。
こうした事例では技術基盤を提供しているのはハイテク企業ですが、実際には金融基盤としての機能も担っているのが実情です。しかし、これらの企業は金融ライセンスの取得を加速することも止めていません。中国を代表するテック企業であるBaidu、Alibaba、Tencent、JD(BATJ)は、検索エンジンやEC、SNSといった分野から事業をスタートしました。その上で、コア事業に加え、注力の対象として金融事業の拡大を図ってきました。できる限り多くのライセンスを取得し、実験的な取り組みを進めているのです。これまでにAlibabaやTencentは、銀行、証券、保険などほぼ全ての分野でライセンスを保有するまでになっています。Baiduはやや遅れをとっているものの、JDはBATに比べて後発組ですが、ライセンス取得を急ピッチで進めています。
ライセンスを多く取得することが、BATJの競争力の源泉となっています。企業の影響力が高まるにつれ、思わぬ形でFintechからTechfinへと方向転換が進んでいます。Ant Financialは長期的には金融機関を支援する技術を提供する姿勢を示しています。JDファイナンスも、独自の金融サービス開発ではなく、金融機関とテクノロジーによって生み出される価値を共有したいというスタンスです。JDファイナンスのCEOは「ライセンス取得の目的は攻めるためではなく、守るため」と明言しています。Baiduも最終的な目標が金融機関へのFintech提供にあることを鮮明に打ち出しています。
しかし実際の行動は必ずしもそうではありません。Ant Financialの資産運用プラットフォームは、中国国内の運用会社27社に採用されています。金融機関向けにAnt Fortuneを通じた顧客サービス強化のための統合プラットフォームとして提供されています。主力ファンドであるYu’e Baoの運用資産は2018年6月末で1兆8000億元を突破するなど、成長を遂げています。
テクノロジー各社がある程度後退し、技術提供に特化する流れは合理的だと言えます。厳しい規制と銀行業界からの競争圧力により、自社のポジションを再定義する必要に迫られた結果です。中国人民銀行(中央銀行)は第三者決済事業者を「小規模・頻繁な決済を提供するベンダー」と位置づけています。加えて、巨額の金融商品を管理・運営すること自体が、Ant Financialにとって大きな負担となることが予想されます。テクノロジー各社が従来型の金融サービスを継続するためには、外部からの規制強化への対応や銀行との新たな競争、製品の最適化など、多岐にわたる課題に取り組む必要があるでしょう。
一方で、Antがプラットフォームを技術力の示威として浸透させるメリットも大きいことを実績は示しています。顧客からの投資が3倍に増加したことで自信を深め、本格参入を果たしました。参入障壁を極力低くすることに加え、投資業界への本格進出についても検討の余地があると言えるでしょう。こうした取り組みが、資本力に乏しい層への機会提供につながっています。Antのプラットフォームは、このカテゴリーの人々にとって、投資業界の参入機会を劇的に拡大させたと言えます。
Ant Fortuneの社長は「当社の調査では、80年代後半から90年代に生まれた中国人世代は、よりパーソナライズされた金融商品を求めていることが分かっています」と指摘しています。つまり今回のプラットフォームが、人との繋がりの大切さを強調しつつ、個人の資産状況を問わず誰もが自身の金融目標を達成できるよう、中国で初めて前例のないプラットフォームを提供したということです。
情報源:Karpon