2025/10/16

雷軍と李想が女性ユーザー争奪:小米新SUVと理想i6の戦略比較

背景と関係性

中国の新興自動車メーカー同士の関係は、かつての「好基友」的な親交から、徐々に競争へと変化している。小米創業者の雷軍と理想自動車の創業者である李想は、2025年9月25日の雷軍の年次講演で「国内の他の車も検討できる」と理想i6を公に推奨したことがきっかけで、互いの製品を意識し合うようになった。

しかし、同じ業界でありながら、両者は異なる市場セグメントを狙っている。雷軍は小米のスマートフォン事業で培った「高配低価」戦略を自動車へ持ち込み、女性ユーザーの比率が約50%(2025年9月25日)に達したことを根拠に、女性層へのアプローチを強化している。一方、李想は理想の「奶爸車」イメージから脱却し、若年層・女性層を取り込むべくi6を投入した。

製品ラインナップとターゲット

理想i6は、同社史上最小の5座純電SUVとして位置付けられ、主に単身者や小規模ファミリー、そして女性ユーザーをターゲットにしている。広告では「皇后座席」や「i人空間」といった感情価値を前面に出し、従来の「家族向け」イメージを刷新しようとしている。

対照的に、小米は大型6座SUVを開発し、車体は方正で3列シートを備え、6〜7人乗りが可能とされている(最新車諜照)。このモデルは、家族での長距離移動を想定した「快適圏」への侵入を狙い、2025年秋に新疆で実地テストを実施した。

価格・性能比較

小米新SUVは1.5リッター4気筒増程エンジンと前後双電機による四輪駆動システムを搭載し、純電走行距離は約200〜400km、満油満電での総走行距離は約1,500kmと発表されている(2025年情報)。この数値は、理想L9や問界M9を上回るとされている。

価格面では、小米は「高配低価」戦略を継続し、同等装備の競合車に比べて5〜10万元(約5〜10万人民元)安価に設定する方針を示している。理想i6も同様に、双腔空懸や冷蔵庫といった高級装備を全車種で標準装備し、価格は小米YU7よりも1.38万元(約13,800元)低く設定された。

女性ユーザーへのアプローチ

小米は車体カラーに「流金粉」や「丹霞紫」など女性好みの配色を採用し、三層銀メッキサンシェードやスマートメイクミラー、口紅防落下スロットなど、細部にわたる女性向け機能を搭載した。これに対し、理想i6は「皇后座席」や広い室内空間を売りにしているが、外観デザインや内装の個性化に関しては保守的で、女性ユーザーからの評価は分かれている。

実際、SNS「小紅書」上では、i6の快適性や知能運転支援は好評である一方、デザイン面での評価は賛否が分かれ、特に若年女性からは「家族車」のイメージが強く残るとの声が多い。

市場反応と課題

理想i6は発売直後の5分で1万台以上の大定を獲得し、48時間以内に全国の販売店で平均80〜90台の大定が出るというデータ(理想側発表)もある。総大定数は約5万台に達したとされるが、これは1万元の現金割引と静音電吸ドアなどの特典が付いた期間限定オファーによるもので、割引終了後の販売持続性は不透明である。

一方、小米はSU7とYU7の2モデルで一定の市場シェアを確保しているが、工場の生産能力が15万台/年(一期工場)に留まり、需要に対して供給が追いつかない状況が続いている。特にYU7は納車まで約1年を要し、SUVがヒットした場合は「半年以上待ち」になる恐れがある。

2025年7月の統計では、増程車の販売は前年同期比で11.4%減少し、純電動車は24.5%増加した。増程車市場の縮小は、理想が増程SUVで築いたポジションを脅かす要因となりつつある。

総じて、雷軍と李想は同じ「女性ユーザー争奪」の舞台で、異なる製品戦略とマーケティング手法を展開している。小米はデザインと付加価値で女性の感情的ニーズに訴え、理想は機能と価格で実用性をアピールする。今後、どちらが持続的なシェアを確保できるかは、供給体制の改善と、女性ユーザーの本質的な価値観にどれだけ応えられるかにかかっている。

両社ともに、2025年秋に向けて新たなモデル投入やサービス拡充を計画しており、国内のEV市場はますます多様化と激化が予想される。

出典: https://www.huxiu.com/article/4792933.html?f=wangzhan