2025/10/23

アリババ、AI対話アシスタントを「夸克」へ統合 Qwen3‑Max搭載でGPT‑5に匹敵

背景と「C計画」

数日前、アリババは「C 計画」の存在を公表した。これは AI 対話アシスタントを開発するプロジェクトで、名称の「C」はクラシックゲーム「パックマン(Pac‑Man)」に由来すると噂された。パックマンが豆を食べて成長するイメージから、同社が開発中の「豆包(Doubao)」に通じるものがあると期待された。

夸克(Quark)に統合された対話アシスタントの概要

先日、アリババは自社の AI 旗艦アプリ「夸克」に対話アシスタント機能を正式に搭載したことを発表した。新機能は別アプリとして「豆包」を作るのではなく、既に多くのユーザーが利用している夸克に直接「塞」込む形で提供される。

夸克の対話アシスタントは、アリババがクラウド栖大会で披露した最新の閉鎖型大規模言語モデル「Qwen3‑Max」を採用している。このモデルは、世界的な大規模モデル評価ランキングで GPT‑5 と Claude Opus 4 を抜き、上位 3 位に入る実績がある。

実際の利用シーンと評価

ユーザーは夸克内で検索モードと対話モードを自由に切り替えられる。検索モードは従来通りの深度検索で、対話モードでは AI が会話形式で回答を生成する。実際にテストしたところ、回答の質は検索モードと変わらず、むしろ対話形式の方が情報に集中しやすいと感じられた。

例えば、家庭で使用している箸の安全性について質問すると、AI は全ネット上から約 200 条の情報を検索し、木製箸が最も安全で健康的であると結論付けた上で、関連動画へのリンクも提示した。

また、広州の冬用布団の重さを尋ねると、素材別・シーン別・人数別に分けた具体的な提案を示し、単身者は 6 斤、二人用は 8‑10 斤が目安と回答した。

時事ニュースや技術情報についても、AI は自前のデータベースだけでなく、全網検索で最新情報を取得する。iPhone Air の eSIM が何枚まで利用できるかという質問に対しては、複数の国内外メディア記事を引用し、具体的な上限や利用制限を明示した。

金価格の変動や投資ファンドの評価に関する質問でも、夸克は自社の文書データベースから分析レポートを抜粋し、最新の価格変動(例:金価格が 1000 元を突破し、翌日 50 元下落)を踏まえた解説を提供した。

中国市場における位置付けと OpenAI との比較

夸克は「豆包」と共に A16z が選出した世界トップ 100 AI アプリのうち上位 20 に入っている。今回の対話アシスタント統合により、同社は単なる検索ツールから、生活・仕事全般をカバーする「AI スーパーボックス」へと進化した。

OpenAI も同様に、ChatGPT を中心に AI ブラウザやサードパーティアプリ連携機能を拡充し、AI がスマートフォン上の全アプリを統合する「OS」化を目指している。夸克のアプローチは、ユーザーが既に慣れ親しんでいるアプリに AI 機能を「付加」する点で、より実務的かつ中国ユーザーに適した形と言える。

今後の展開とユーザー体験への影響

夸克は過去に「AI スーパー枠」へのアップデートや、AI 創作プラットフォーム「造点」などを導入し、AI の推論力強化、垂直領域(高考、医療、オフィス)への特化、エコシステムのシームレス連携を進めてきた。今回の対話アシスタント統合は、これらの取り組みを総合した最終形態と見られる。

実際に、受験生が物理の問題を撮影してアップロードすれば、AI が解答だけでなくステップバイステップの解説を提供し、さらにノートとして保存できる。すべてが同一アプリ内で完結するため、別アプリへの切り替えが不要になる。

このように、夸克は「ツールを使う」から「ツールが自ら行動する」へとユーザー体験を根本的に変える試みを続けている。AI が日常のあらゆる疑問に即座に答え、情報検索と対話をシームレスに結びつけることで、スマートフォン上の情報ハブとしての位置付けが強化されるだろう。

今後は、画像認識やマルチモーダル対話、専門領域への深掘り機能が追加される可能性が指摘されており、AI が「最も理解しやすい入口」として定着するかどうかが注目される。

出典: https://www.ifanr.com/1641948