中国電動車メーカーBYD、超高性能モデル『仰望 U9 Xtreme』を限定販売
中国の電動車大手・比亚迪(BYD)は、同社が展開する高級ブランド「仰望(Yangwang)」から、世界限定30台のスーパースポーツカー「仰望 U9 Xtreme(通称 U9X)」を発表した。2025年9月20日、河南省郑州航空港区の比亚迪サーキットで正式に公開された本モデルは、極限走行性能を追求した特別仕様車として注目を集めている。
U9 Xtreme の技術的特徴と記録
U9 Xtreme は、比亚迪が開発した全域1200V高圧プラットフォームをベースに、4基の30,000回転モーターを搭載。各モーターのピーク出力は555kWで、総合出力は3000PS(約2200kW)を超える。車体重量に対する推進力は1217PS/tという驚異的な数値を実現し、従来の電動スーパーカーを大きく上回る加速性能を持つ。
冷却システムは二層構造の新設計に刷新され、総合冷却効率が133%向上。ブレーキはチタン合金と炭素陶器を組み合わせた「チタン合金炭陶ブレーキシステム」を採用し、耐熱性と制動力を高めた。タイヤはGitiSport社のe・GTR²PRO半熱溶融コンパウンドを使用し、トラック走行時のグリップと耐久性を最適化している。
2025年8月に実施されたエンジニアリングテストでは、U9 Xtreme が世界最高速度記録を更新し、496.22km/hを記録した。続く9月のニューベルクリン北環(Nürburgring Nordschleife)では、6分59秒157のラップタイムで157周を走破し、量産電動車として初めて7分台を突破した。
ブラジル市場への進出と唯一のオーナー
同社のブランド・広報部門総経理である李云飞氏は、2025年10月12日の微博投稿で、ブラジルの著名レーシングドライバーであり、フォーブス・ブラジル版のトップ富豪に名を連ねるレオ・サンチェス氏が、同国で唯一の「仰望 U9 Xtreme」オーナーになることを明らかにした。李氏によれば、過去1か月余りでブラジル国内からは20件以上の購入意思表示が寄せられたが、最終的にサンチェス氏が選ばれた背景には、同氏のレースへの情熱と「仰望」ブランドへの長年の関心・執着があったという。
ブラジルは近年、電動車の導入促進策を強化しており、政府は2024年に電動車購入補助金や充電インフラ整備の予算を大幅に拡充した。こうした政策環境の中で、ハイエンド電動スポーツカーへの関心も高まっているが、U9 Xtreme のような超限定モデルは、国内での供給枠が1台に限定されるため、所有者のステータスは極めて高いものとなる。
比亚迪の戦略と今後の展望
比亚迪は、電池技術とモーター技術で世界トップクラスのシェアを持ち、2023年には全世界で約300万台の電動車を販売した実績がある。高性能モデル「仰望」シリーズは、同社が単なる量産電動車メーカーから、ラグジュアリー・ハイパフォーマンス市場へも本格参入する姿勢を示すものである。
U9 Xtreme の限定販売は、グローバルで30台、うちブラジルは1台という配分で行われ、予約受付は2025年10月中旬に開始された。購入希望者は、比亚迪の公式サイトから専用のカスタマイズプランを選択でき、車体カラーや内装素材、走行モードなどを個別に設定できる。
まとめ
「仰望 U9 Xtreme」は、電動車が持つ可能性を極限まで引き上げたモデルとして、世界的な速度記録とトラック走行性能で注目を集めている。ブラジル唯一のオーナーに選ばれたレオ・サンチェス氏は、同車の性能とブランド価値を体現する象徴的存在となるだろう。比亚迪は、こうしたハイエンドモデルを通じて、電動車市場全体のイノベーションと高付加価値化を加速させる意図を示している。