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2025/10/19

長安汽車、2030年に航路飛行車を商業化へ―ロボット・電動車も同時に拡大

長安汽車が示す次世代モビリティ戦略の全貌

中国の大手自動車メーカーである長安汽車(Changan Automobile)は、2024年10月19日に開催した投資家向け説明会で、ロボット事業・飛行車・自動運転・テクノロジー戦略の転換に関する詳細を発表した。特に注目すべきは、2030年までに航路飛行車(エアモビリティ)を商業化し、実際に運航を開始するという具体的なロードマップである。

航路飛行車の商業化目標と投資規模

長安汽車は、今後5年間で200億元(約3,200億円)以上を飛行車産業の開発に投入すると明言した。さらに、10年間で1,000億元(約1.6兆円)規模の資金を、陸・海・空の統合移動ソリューションや人形ロボットの研究開発に振り向ける計画だ。これにより、同社は単なる自動車メーカーの枠を超えて、空中モビリティとロボティクスを結びつけた新たなエコシステムの構築を目指す。

航路飛行車の実装イメージと市場背景

航路飛行車は、都市間や都市内の決まったルートを自律的に飛行し、乗客や貨物を輸送することを想定した空中タクシーである。中国では、政府が2020年代に空中モビリティの実証実験や規制整備を進めており、都市部の渋滞緩和や遠隔地へのアクセス向上が期待されている。長安汽車は、2023年に「飛行車第一株」と称されるEHang(億航智能)と提携し、技術協力や共同開発を進めていることが、昨年12月の公式発表で明らかになっている。

ロボット事業の進展:人形ロボットの開発

飛行車と並行して、長安汽車は人形ロボットの研究開発にも注力している。主要パートナーと共同で、ロボットの「脳」(制御アルゴリズム)・「エネルギー」(バッテリー)・「駆動」(モーター)といったコア技術の突破を目指すと発表した。具体的な製品化時期は示されていないが、同社はロボットが将来的に物流やサービス業での自律搬送を担うことを想定している。

電動車ラインナップの最新情報

長安汽車は、飛行車以外にも多数の電動車モデルを同時に投入している。主な新製品は以下の通りだ。

  • 長安啓源(Changan Qiyuan)A06:超大空間を実現し、同クラス唯一の全アルミダブルウィッシュボーン+五連桁サスペンションを採用。800Vシリコンカーバイド(SiC)プラットフォームと6Cフラッシュ充電に対応し、天枢(Tianshu)レーザー支援運転システムを搭載。9月28日にグローバル先行予約が開始され、近く正式販売が見込まれる。
  • 長安啓源 Q05:新プラットフォーム上に構築され、寧徳時代(CATL)製バッテリーを搭載。3C高速充電に対応し、純電走行距離は506km。クラス初のレーザーライダーと4nm天玑(Tianji)車載用チップセットを装備し、現在盲目予約受付中。
  • 深藍(DeepBlue)L06:世界初の3nm車規格チップを搭載し、中国車としては初の磁流変(MR)サスペンション量産車となる。全車種にレーザーライダーを標準装備し、エンドツーエンドの一段階運転支援アルゴリズムを採用。
  • 阿維塔(Avita)12 四レーザー版:10月18日に予約販売が開始され、純電と増程ハイブリッドの二つの動力形態を提供。10月28日に正式販売予定で、幅広い利用シーンに対応する。

自動運転技術の進化と市場シェア

長安汽車は、2025年上半期の決算で純利益が22.91億元(約3,600億円)と前年同期比19.09%減少したと報告しているが、同社はL2レベルの先進運転支援システム(ADAS)を2025年までに標準装備化し、L3以上の機能は全車種の10%以上に搭載する方針を示した。これにより、国内外の自動運転市場での競争力を高める狙いだ。

中国市場における制度的背景と競争環境

中国政府は、2030年までに空中モビリティの商業化を支援する政策を段階的に整備している。航空法の改正や都市部の空域管理の緩和、充電インフラの標準化などが進められ、民間企業の参入が活発化している。一方で、同分野ではEHangやGeely(ジーリー)など複数の企業が技術開発を競っており、長安汽車は自動車製造の経験と資金力を活かして差別化を図ろうとしている。

今後の展望と課題

長安汽車が掲げる2030年の航路飛行車商業化は、技術的・規制的ハードルが高いものの、同社の巨額投資とパートナーシップ戦略から見て実現可能性は高いと評価できる。ロボット事業や電動車ラインナップの拡充と合わせて、総合的なモビリティプラットフォームを構築することで、国内外の顧客基盤を拡大し、次世代交通インフラのリーダーシップを狙う姿勢がうかがえる。

しかし、投資額が大規模である分、財務リスクや市場の受容性、技術成熟度の評価が重要になる。特に航空法の改正や空域管理の整備が遅れた場合、航路飛行車の実証運用が遅延する可能性がある。長安汽車は、これらのリスクを分散させるために、陸・海・空の統合ソリューションを同時に推進し、複数の収益源を確保する戦略を取っている。

総じて、長安汽車は「車」から「空」へ、そして「ロボット」へと事業領域を拡大することで、次世代モビリティ市場における競争優位を築こうとしている。今後の技術実証と規制動向が注目される。

出典: https://www.ithome.com/0/890/619.htm

2025/10/13

小鹏汇天の「陆地航母」飛行車、600台中東初受注で記録更新、2027年市場投入へ

背景と市場の動向

近年、中国の新興企業が航空機と自動車の境界を越える「飛行車」開発に本格的に取り組んでいる。その中でも、広州拠点で事業を展開する小鹏汇天(Xpeng Huìtiān)は、独自のプラットフォーム「陆地航母(ランド・エアキャリア)」を掲げ、垂直離着陸(VTOL)機能と高速走行性能を兼ね備えた車両の量産化を目指している。中国国内ではすでに7,000台の注文が集まり、同社は国内外での需要拡大を見込んでいる。

600台の大型受注が示す中東市場の期待

2023年10月12日、同社はドバイで開催された国際品鑑会にて、アラブ首長国連邦(UAE)のAli & Sonsグループ、カタールのAlmanaグループ、クウェートのAlSayerグループ、そしてUAE華商総会と、合計600台の飛行車購入契約を締結したことを発表した。この受注は、飛行車分野における海外最大規模の一括注文として記録された。

契約に基づく納入は最速で2027年に中東地域へ向けて開始される予定であり、同社はこの市場を「航空交通がインフラ整備に追いつかない地域での新たなモビリティソリューション」と位置付けている。中東諸国は広大な砂漠地帯と都市間の長距離移動需要が高く、従来の自動車やヘリコプターだけでは対応しきれないギャップを埋める手段として、VTOL機能を持つ飛行車への関心が高まっている。

广州工場の生産体制と量産計画

同時に、小鹏汇天は広州に新設した飛行車専用の製造拠点が9月末に全ラインを完了し、世界初の「流水線方式」で大規模生産が可能となったことを公表した。この工場は年産1万台規模の生産能力を有し、2026年に本格的な量産を開始する計画だ。

生産ラインは自動車組立と航空機組立の両方の工程を統合したハイブリッド方式を採用しており、完成車は30分ごとに1台のペースでラインから下ろされる見込みである。これにより、従来の手作業中心の航空機製造に比べて大幅なコスト削減と納期短縮が実現できると同社は説明している。

次世代混動長航程機 A868 の概要

今回のイベントでは、開発中の新型混合動力飛行車「A868」も披露された。A868は電動推進と内燃エンジンを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載し、設計上の航続距離は500km以上、最大航速は360km/hを超えるとされている。これにより、都市間の高速移動だけでなく、遠距離の地域間輸送にも対応できると期待されている。

同機は2024年11月に広州で初公開される予定で、実際の走行テストや安全認証の取得に向けた最終調整が進められている。小鹏汇天は「A868は次世代モビリティの標準モデルになる」と語り、今後の量産体制への組み込みを視野に入れている。

国際ブランド「ARIDGE」の発表

イベントのハイライトの一つとして、同社は新たな国際ブランド「ARIDGE(エアリッジ)」を正式に発表した。ロゴは漢字の「飛」をモチーフにデザインされ、Air(空)とBridge(橋)を組み合わせた名称は「空と地上をつなぐ橋梁」という意味を持つ。

ARIDGEは小鹏汇天が提供する飛行車をグローバル市場で展開する際のブランド名として位置付けられ、今後の販売戦略やマーケティング活動において中心的な役割を果たすとされている。

今後の展望と課題

小鹏汇天は、2026年の量産開始と2027年の中東市場投入を目標に、技術認証や安全基準の取得に向けた作業を並行して進めている。特に、航空機としての適航証明(型式証明)取得は各国の規制当局との協議が必要であり、時間とコストがかかることが予想される。

また、飛行車は高度な制御システムと通信インフラを必要とするため、都市部での運用に向けた空域管理や交通管制の整備も課題となる。中国国内では既に無線通信性能テストが完了しているが、海外での運用には各国の航空法規への適合が不可欠である。

それでも、同社は「20年後の飛行車市場は2兆米ドル規模に達する可能性がある」と楽観的な見通しを示しており、今回の600台受注はその成長シナリオを裏付ける重要なマイルストーンと位置付けている。

まとめ

小鹏汇天の「陆地航母」シリーズは、国内での需要蓄積とともに、初の大規模海外受注を獲得したことで、グローバルな飛行車市場への本格参入が具体化した。広州工場の流水線生産体制、ハイブリッド長航程機A868、そして新ブランドARIDGEは、同社が技術・生産・マーケティングの三位一体で市場拡大を狙う姿勢を示す。

今後、適航認証取得や空域管理制度との整合性が鍵となるが、2026年からの量産開始と2027年の中東投入が実現すれば、飛行車は従来の自動車やヘリコプターを超える新たなモビリティとして、都市と地域を結ぶ「空の橋梁」となる可能性が高まるだろう。

出典: https://www.ithome.com/0/888/904.htm