はじめに
10月30日付けでIT之家が報じたところによると、Huawei(ファーウェイ)は公式サイトに「スマートフォン星闪車钥匙使用ヘルプ」を新たに掲載し、同機能がHarmonyOS 6に実装されたことを発表した。これにより、同社の最新スマートフォンであるMate 70シリーズやPura Xシリーズが、対応車種のデジタルキーとして利用できるようになる。
星闪車钥匙とは何か
星闪車钥匙は、Huaweiが独自に開発した「星闪通信」技術を用いた無感覚デジタル車鍵である。従来のBluetooth車钥匙と比較して、以下の点で優位性があるとされている。
- 機能がフルセットで提供され、車両への接近時に自動でドアが解錠される「迎宾」機能が利用可能。
- 高精度な位置情報に基づくロック/アンロックが可能で、ユーザーが車から離れた際に自動でロックがかかる。
- 通信応答速度が速く、操作遅延がほとんどない。
このように、星闪車钥匙はBluetooth車钥匙に比べて「機能全、定位准、响应快」の三本柱を実現している。
対応機種と車種
HarmonyOS 6に搭載された星闪車钥匙は、現在以下のスマートフォンで利用できる。
- Mate 70シリーズ(Mate 70、Mate 70 Proなど)
- Pura Xシリーズ(Pura X 1、Pura X 2など)
また、同機能に対応した車種としては、Huaweiが展開する自動車ブランドの以下が挙げられる。
- 尊界(Zun Jie)S800
- 享界(Xiang Jie)S9T
- 问界(Wen Jie)M9
これらの車両は、Huaweiの「鸿蒙智行」アプリと連携し、車両情報の表示や遠隔操作が可能になる。
実装の背景と市場動向
中国国内では、デジタルキーの普及が急速に進んでいる。特にスマートフォンと車載システムの統合は、IoT(モノのインターネット)戦略の一環として政府や自動車メーカーからも後押しされている。Huaweiは、独自OSであるHarmonyOSを通じてエコシステム全体を統合し、スマートフォン・スマートウォッチ・車載端末をシームレスに結びつけることを目指している。
同社の半導体子会社である海思(HiSilicon)は、2025年第四四半期までに「星闪車钥匙」機能を搭載したスマートフォンが5,000万台を超える規模でOTA(Over‑The‑Air)アップデートされる見込みだと発表している。この数字は、同機能が単なる実証実験段階から商用レベルへと移行したことを示す重要な指標である。
関連製品と今後の展開
星闪車钥匙はスマートフォンだけでなく、Huaweiのウェアラブルデバイスにも拡大されつつある。たとえば、Huawei WATCH GT 6シリーズは「玄玑感知システム」と共に星闪車钥匙を搭載し、価格は1,488元(約2,300円)から2,488元(約3,800円)で販売されている。
さらに、Mate XTs(非凡大师三折叠手机)でも同機能が標準装備され、他の機種もHarmonyOS 6.0への適合が進められている。海思は「今後、ほぼ全てのHuawei製スマートフォン・スマートウォッチが星闪車钥匙を標準装備する」とコメントしており、エコシステム全体でのデジタルキー化が加速する見通しだ。
また、車載側の対応としては、Huaweiが提供する「鸿蒙智行」アプリが車両情報画面に星闪接続オプションを追加したことが確認されている。ブロガー@电车小飞は、同日Twitter相当のプラットフォームで「问界 M9が星闪接続に対応した」と報告し、ユーザー間での期待感が高まっている。
まとめ
Huaweiは、HarmonyOS 6に星闪車钥匙機能を統合し、Mate 70やPura Xといったハイエンドスマートフォンと、尊界 S800・享界 S9T・问界 M9といった自社車種を結びつけた。高速・高精度な通信技術と、2025年Q4に向けた大規模OTA計画は、中国におけるデジタルキー市場の拡大を示唆している。今後、スマートフォン・ウェアラブル・車載端末が一体化した「全方位デジタルキー」体験が一般ユーザーにも広がることが期待される。

