2025/10/29

Redmi K90価格上昇とメモリ不足、AI需要が引き起こすスマホ・PC部品価格高騰

Redmi K90の価格改定とその背景

中国のスマートフォンメーカー・小米(Xiaomi)の子ブランド、Redmiが2024年10月に発表したK90シリーズは、同社の中価格帯の主力機種として期待されていた。しかし、標準モデルの価格が一斉に上昇したことが大きな話題となった。具体的には、256GBモデルが100元から200元、512GBモデルが300元、1TBモデルが400元の値上げとなり、同価格帯の消費者にとっては予想外の負担となった。

この価格上昇は、同時期に発売されたiPhone 17が「加量不加価」で販売されたことと対照的で、Redmiファンの不満がSNS上で拡散した。小米の副社長である盧偉冰は自ら微博で「上流工程のコスト圧力、特にストレージコストの上昇が予想をはるかに超えている」と説明し、12GB+512GBモデルは発売後1か月以内に300元の値下げで一時的に沈静化した。

メモリ価格の急騰が波及する業界全体

Redmiだけでなく、2024年9〜10月に発売された多くの新機種でも、ストレージ容量別の価格上昇が顕著に見られた。特に需要が集中する容量帯での値上げ幅が大きく、これは単なる個別メーカーの戦略ではなく、業界全体の供給逼迫が原因である。

実際、同じく2024年10月にPCユーザーが体感したのは、DDR5 16GBメモリモジュールの価格が399元から529元へと33%上昇したことだ。購入直後の価格と現在の価格を比較すると、わずか数日で大幅な値上がりが確認できる。

供給不足の根本原因:AI・クラウド需要の急増

ADATA(威刚科技)の董事長・陳立白は2024年10月21日に、同社の主要製品ラインであるDDR4、DDR5、NANDフラッシュ、HDDが同時に在庫不足に陥り、販売制限を余儀なくされたと公表した。これまでの在庫不足はモジュールメーカーが備蓄した結果が多かったが、今回は資金力のあるクラウドサービス事業者やAI大手が自社利用目的で大量に購入したことが主因である。

具体的には、AmazonやMicrosoftといった米国のクラウドプロバイダーに加え、Alibaba、Tencent、Baiduといった中国の大手クラウド事業者、さらにはOpenAIがサーバー用DRAMやHBM(高帯域メモリ)を大量に確保した結果、サムスン、SK海力士、Micronといった主要チップメーカーの生産ラインが商用向け(スマートフォンやPC)へ回す余裕が激減した。

主要メーカーの動向と価格予測

SK海力士は最新の決算で、来年の全ストレージ製品がすでに受注済みであると発表し、当四半期の利益が62%増加したと報告した。業界アナリストは、DRAM需要は来年最低でも20%増、NAND需要は10%以上の伸びが見込まれると予測している。また、サムスンとSKは第4四半期にメモリチップ価格を最大30%引き上げる計画を示している。

このような供給側の逼迫は、データセンターやAIトレーニングに必要な大容量・高帯域メモリへの需要が長期的に増加することに起因している。OpenAIが掲げる3000億ドル規模の「Stargate」計画は、AIインフラ全般に対する投資を加速させ、半導体メーカーへの専用供給を確保するための大規模な枠組みである。これにより、AI専用メモリやストレージの生産が優先され、消費者向け製品への供給がさらに後回しになる可能性が高まっている。

スマートフォン市場への直接的影響

価格上昇の波及先として最も影響を受けるのは、コスト感度の高い中低価格帯のスマートフォンである。フラッシュメモリの価格が上がり代替品が見つからない状況では、メーカーは価格を上げるか、他のスペックを削るかの選択を迫られる。いずれにせよ、消費者が望む「高性能・低価格」のバランスは崩れつつある。

さらに、2024年に予定されている次世代プロセッサ(例:AppleのA20、Qualcommの次世代Snapdragon 8、MediaTekのDimensityシリーズ)への2nmプロセス移行は、チップ自体のコスト上昇を伴う。AI機能を端末側で実装するために必要なLPDDRメモリの需要も同時に増大し、iPhone 18が12GBメモリを標準装備する計画が報じられていることから、Apple製品の価格も上昇する見通しだ。

「双十一」前の購入タイミングはいつか

中国最大の年末商戦「双十一(11月11日)」は、過去数年にわたりスマートフォンやPC部品の価格が下がる絶好の機会とされてきた。しかし、今回のメモリ価格高騰は「待ち続ける」戦略が通用しなくなる可能性を示唆している。iPhone 17が価格据え置きで販売された今、2024年の双十一は「今年最後の割安購入チャンス」となるだろう。

AI・クラウド需要は今後5年で減少する見込みがなく、ストレージやメモリの価格は「容量ベースでの長期的上昇」が避けられないと予測される。消費者は、価格上昇を前提に製品選択を行う必要があるだろう。

結局のところ、これは「終わり」でも「始まり」でもない。iPhone 18の価格が正式に発表され、AI向けハードウェアの需要がさらに顕在化したときに、現在の価格上昇が「新たな常態」の始まりであることが明らかになるだろう。

出典: https://www.ifanr.com/1642435