2019/01/20

QRコード決済の普及に必要な店舗数についての考察

日本におけるキャッシュレス決済の普及率が約20%にとどまる中、政府は「キャッシュレス・ビジョン」を掲げ、2025年までにその比率を40%に、将来的には世界最高水準の80%に引き上げることを目指しています。

近年、特にQRコード決済サービスの動向が活発化しています。LINE PayやPayPayが決済手数料を無償化する施策を展開し、多様なサービスがベンチャー企業から登場しています。

昨年末、PayPayは総額100億円の20%ポイント還元キャンペーンを実施し、これに続きLINE Payも同様のキャンペーンを行いました。また、年初にはauペイが4月から楽天ペイやクイックペイが導入されている約100万店でのQRコード決済開始が報じられました。しかし、まだ普及は限定的です。

加盟店の急速な増加を図る動きが見られますが、加盟店の拡大は容易ではありません。これは、加盟店開拓のマンパワーの限界だけでなく、店舗側に加盟のメリットが見出されにくいという課題が存在するためです。

中国ではQRコード決済が爆発的に普及していますが、日本ではまだその利用者は限られています。消費者には魅力的なオファーがあるものの、実際に利用可能な店舗が周辺に少なく、困っているユーザーもいるでしょう。

LINE Payや楽天Payが100万店での決済可能を謳っていますが、実際にQRコードが使える店舗は10万店舗に満たない可能性があります。では、QRコードがどこでも使えるようになるためには、どの程度の店舗を獲得する必要があるのでしょうか。

消費者の日常的な支払いシーンを分析し、都市部に住む消費者が頻繁に利用する飲食、小売ブランドを抽出しました。すなわち、大手チェーン店をカバーすることで、ストレスなく各社のQRコード決済を利用できると考えます。

消費パターン

店舗数を100万、1000万と拡大するよりも、利用頻度の高い場所に絞ってアプローチすることが有効です。例えば、主要な飲食ブランドだけで対応すれば約2万店舗、主要コンビニ3社を含めると約8万店舗で済みます。営業のマンパワーに依存するよりも、大手加盟店に対して効果的なマーケティング訴求や顧客送り込みが重要となります。

現在のキャッシュレス決済サービス各社の進捗状況について考察します。下記のデータによると、多くのサービスがまだ充分に導入されておらず、特に国内市場においては加盟店への訴求が十分ではないと見受けられます。対照的に、インバウンド市場を対象としたAlipayやWeChat Payは、中国人観光客が頻繁に訪れる加盟店の大部分をカバーしている印象があります。

PayPayの紙QRコードとは異なり、大手チェーン店ではほぼ必ずPOSシステムの改修が求められます。そのため、導入には相応の時間と労力が必要で、地道な取り組みが不可欠です。Line Payのように、POS接続やペイメントゲートウェイ接続を初期段階から重視している企業は、使用可能な場所が多いという利点があります。