2025/10/11

CATL子会社「时代智能」、約20億人民元の外部資金調達を完了、磐石底盤の量産へ

背景と資金調達の概要

IT之家が2025年10月11日に報じたところによると、寧徳時代(上海)智能科技有限公司、通称「CATL 时代智能」は、約20億人民元(CNY)の初回対外資金調達に成功した。投資者は、博裕投資、国泰君安、鸿商集团といった市場化機関に加え、産業資本の北汽産投、国有資本の上海科創、孚騰資本など多様なプレイヤーが名を連ねている。

調達された資金は、主に同社が開発・提供する「磐石(Pan‑Stone)」スライド式底盤の量産化と、次世代技術の研究開発に充てられる予定だ。2024年以降、CATL 时代智能は北汽、阿维塔(Avita)など国内ブランドだけでなく、東南アジア・中東・欧州の複数企業とスライド底盤の協業契約を締結している。

「磐石」底盤の特徴と安全性能

「磐石」底盤は、電池を車体の中心に配置したスライド式プラットフォームで、ハードウェアとソフトウェアが拡張可能なモジュラー構造を採用している。2024年12月に正式に発表された同製品は、走行中に電池が搭載された状態でも120km/hの正面衝突時に火災や爆発が起きないという、業界最高水準の安全性を謳っている。

安全性を支える技術は以下の通りだ。

  • 「立体仿生龟甲结构」:車体とエネルギー舱が一体化した三次元構造で、衝撃エネルギーを分散。
  • 「航母式阻拦结构」:段階的に減速させる構造により、衝突時の侵入速度を低減。
  • 「潜艇级热成型钢」および「航天级铝合金」:底盤の支撑強度を大幅に向上。
  • 「高韧性绝缘膜」:電芯内部の衝撃エネルギーを吸収し、短絡や熱暴走を防止。

これらの技術は、電池メーカーが自社のバッテリーパックを直接車体に統合する「バッテリーベース」設計を実現する上で重要な要素となっている。

中国国内外での協業状況

2024年に入ってから、CATL 时代智能は北汽集団(北京汽車集団)の子会社である北汽産投と協業し、国内向けの電動バスや商用車向けに「磐石」底盤の試作車を導入した。また、スタートアップの阿维塔と共同で、コンパクトEV向けのカスタマイズ版底盤を開発し、同年秋に東南アジア市場への試験販売を開始した。

欧州では、ドイツの中小EVメーカーと技術提携を結び、欧州規格(EU規格)に適合した底盤の認証取得を目指している。中東地域でも、サウジアラビアの大手自動車メーカーと共同で、砂漠環境に耐える高温対応型底盤の実証試験が進行中だ。

資金調達がもたらす市場へのインパクト

今回の約20億人民元規模の資金は、2025年以降に中国国内での「磐石」底盤搭載車両の量産を加速させると見込まれる。中国は2023年に約6.9百万台の電動車が販売されたとされ、バッテリーベース車両の需要は年々拡大している。CATLは世界最大級のリチウムイオン電池メーカーとして、バッテリーパックだけでなく、車両全体のプラットフォーム提供へと事業領域を拡大している。

投資家側の視点からは、国有資本や産業資本が参画したことが、政府主導のEVインフラ整備や産業政策と整合性が高い点が評価されている。特に上海科創や北汽産投は、地方自治体や産業クラスターとの連携を通じて、製造拠点の確保や人材育成を支援する体制を整えている。

今後の展望と課題

「磐石」底盤は、電池と車体を一体化することで車両重量の削減や走行距離の延長が期待できるが、同時に安全認証やサプライチェーンの最適化といった課題も残る。特に、欧州や北米市場では安全基準が厳格であり、認証取得までに時間とコストがかかる可能性がある。

しかし、CATL 时代智能は既に国内外で複数の実証プロジェクトを進めており、技術的な成熟度は高まっている。今後数年で「磐石」底盤を搭載した商用車やコンパクトEVが本格的に市場に投入されれば、電池メーカーが車両プラットフォーム提供者へと変貌する中国の自動車産業構造に大きな変化をもたらすだろう。

出典: https://www.ithome.com/0/888/708.htm