中国の新興EVメーカーNIO(蔚来)が発表した第2四半期決算は、市場にポジティブな驚きをもたらしました。販売台数は前期比で大幅に増加し、純損失も縮小。特にサブブランドの好調が全体を牽引しており、同社が目指す第4四半期の黒字化へ向けて、確かな手応えを感じさせる内容となりました。今回の決算報告と李斌(William Li)CEOの言葉から、NIOが生き残りをかけて実行する、現実的かつ大胆な戦略が見えてきます。
販売台数と引き換えに「妥協」を受け入れた製品戦略
NIOの第2の成長エンジンとなっているのが、サブブランドの「楽道(Lèdào)」です。特に新型SUV「L90」は、CEO自らが「ユーザーの声に耳を傾けた」結果として、これまでNIOがこだわってきた哲学を一部「妥協」し、後部座席の大型スクリーンや大型冷蔵庫といった、市場で人気の高い機能を積極的に採用しました。李斌CEOが「やるなら徹底的にやる」と語るように、この方針転換が功を奏し、販売台数を大きく押し上げています。また、新型「ES8」では旧モデルから大幅な値下げを断行するなど、ブランドイメージの維持よりも、まずは市場での競争に勝ち抜き、規模を確保するという強い意志が表れています。この価格戦略と製品の魅力向上により、8月には月間販売台数が初めて3万台を突破し、戦略が正しい方向へ進んでいることを証明しました。
黒字化は誰のためか?コスト管理と組織改革で見据える未来
NIOは第4四半期での黒字化達成という明確な目標を掲げています。その達成には、販売台数の増加だけでなく、徹底したコスト管理が不可欠です。同社はすでに、スマートフォン事業の更新中止や、開発リソースの選択と集中を行うことで研究開発費を抑制。さらに、販売・管理費についても、セールスチームの組織改革などを通じて効率化を進めています。李斌CEOは、黒字化は「他人に見せるためではなく、自分たちの歩んできた道を検証するため」のものだと語ります。財務的な健全性を取り戻すことは、ユーザーやサプライチェーンからの信頼を獲得し、持続的な成長を遂げるための重要なマイルストーンなのです。目先の利益だけでなく、組織全体の「実力」を底上げし、厳しい競争を勝ち抜くための基盤固めが、今まさに進行しています。