2025/11/10

2025年 AIとロボットが職を変える―マスク予測と中国のAI政策

2025年 AIとロボットが職を変える―マスク予測と中国のAI政策 のキービジュアル

エロン・マスク氏は、AIが2026年に個人の知能を超え、2030年までに人類全体の知能を凌駕すると予測し、スマートフォンは5〜6年以内に姿を消すと語った。これに対し、中国政府は「AI+製造」戦略で産業全体のデジタル化を加速させ、世界的なAI競争の構図が変わりつつある。

マスク氏の未来予測とその根拠

米国の実業家エロン・マスクは、先週のインタビューで「AIは2026年に単一人間のIQを超え、2030年までに人類全体の知能の総和を上回る」と断言した。さらに、メール処理や電話応対といったデスクワークは1〜2年以内に大規模な自動化が進み、プログラミングやコンテンツ制作も同様に置き換えられると予測した。

同氏は「未来にはOSもアプリも存在しない。スマートフォンはAI推論を行うエッジノードに過ぎず、画面やボタンのない端末が情報をリアルタイムで生成する」と述べ、5〜6年後に現在のスマートフォンエコシステムが消滅すると警告した。

AIとロボットがもたらす職業構造の変化

マスク氏の指摘は、単なる予測に留まらず、実際に企業が導入を進めているAI・ロボット技術と合致している。自動運転技術の成熟に伴い、物流・運転手は大幅な転換を余儀なくされ、溶接や調理といった物理労働もロボット化の波に飲み込まれる見通しだ。

米Microsoftのサティア・ナデラCEOは、AIインフラの最大課題は「計算資源の過剰」ではなく「電力供給」だと指摘。GPUを稼働させるための電力が不足すれば、データセンターは機器を倉庫に置いたままにせざるを得ないという。

OpenAIとMicrosoftの最新動向

OpenAIのサム・アルトマンCEOは、同社の年間売上が130億米ドルを超えていると主張しつつ、同時に巨額の赤字も抱えていると認めた。Microsoftは同社の約27%の株式を保有し、2023年度の決算ではOpenAIへの投資が原因で純利益が31億米ドル減少、四半期ベースで約115億米ドルの赤字が生じたと報じられている。

アルトマンは上場の具体的な時期は未定だが、最短でも2027年以降が現実的と述べ、投資家からの圧力に対し「株価が下がれば空売りで利益を得る」姿勢を見せた。

中国政府のAI産業政策と実装状況

中国工業情報化部(MIIT)は、2024年に「AI+製造」戦略を正式に策定し、製造業をAIの主戦場と位置付けた。具体的には、重点産業・重点工程・重点領域のスマート化転換タスクを定め、AI活用ガイドラインを発行した。

同部は、設計支援、バーチャルシミュレーション、故障予測といったシナリオでAIを深く組み込むとともに、AIスマートフォンやAIパソコンといった次世代消費端末の開発を加速させる方針を示した。さらに、人型ロボットや脳機能インターフェースなどの新世代ロボット技術の研究開発支援も明記されている。

実際、DeepSeekやKimiといった中国発AIサービスは、米国のChatGPTやGeminiに匹敵する利用者数を誇り、国内外の研究者から高い評価を受けている。ノーベル化学賞受賞者のマイケル・レヴィット氏も、日常的にDeepSeekを利用しつつ「中国は西側を上回る速度でAIエコシステムを構築している」とコメントした。

産業界の反応と今後の展望

ロボット産業のスタートアップ、宇樹科技(ユッシュテクノロジー)の創業者王興興氏は、2024年の中国ロボット企業の平均成長率が50〜100%に達すると楽観的に見ている。一方で、具身型大規模モデル(VLAやWorld Model)の実用化は予想よりやや遅れ、完全な「ChatGPT時代」のロボットはまだ80%程度のタスク達成に留まると指摘した。

香港特別行政区政府は、AIを「ダブルエンジン」戦略の中心に据え、算力・アルゴリズム・データ・資本・人材の六本柱で産業全体のAI導入を推進すると発表した。金融・物流・医療・スマート製造といった分野でのAI活用が加速すれば、国内外の企業は新たな競争環境に直面することになるだろう。

結論:AIとロボットが切り開く次世代社会

エロン・マスク氏の「スマートフォン消滅」予測は、AIとロボットが生活基盤を根本から変える可能性を示唆している。米国では電力供給とインフラ整備が課題となり、OpenAIとMicrosoftの財務構造が揺れ動く中、中国は政策主導でAI産業の全方位的な拡大を図っている。

日本企業にとっては、AIインフラの電力確保やデータ活用の安全性を確保しつつ、中国や米国の動向を注視し、産業AI(実装)への投資戦略を再検討する時期が来ていると言えるだろう。

出典: https://www.tmtpost.com/7757180.html