2025/11/08

中国Robotaxi企業・文遠知行と小馬智行、2025年に香港上場も課題浮上

中国Robotaxi企業・文遠知行と小馬智行、2025年に香港上場も課題浮上 のキービジュアル

中国の自動運転スタートアップ、文遠知行と小馬智行が同時に香港証券取引所へ上場したものの、商業モデルの確立はまだ先行き不透明です。両社はL4レベルのRobotaxi技術を掲げる一方で、収益構造や政策対応に大きな壁が残っています。

上場の概要と市場の期待

文遠知行は27.1香港ドル、 小馬智行は22.8香港ドルで株式を公開し、いずれも数千台規模の自動運転車両を保有する企業として注目を集めました。上場は資金調達の手段としてだけでなく、Robotaxi市場の「第一株」としてメディアで大きく取り上げられました。

財務実績の比較

文遠知行は2025年第二四半期に売上高1.27億元(前年同期比60.8%増)を計上し、そのうちRobotaxi事業が4590万元で前年比836.7%の伸びを示しました。毛利益は3570万元、毛利率は28%、現金・現金同等物+金融資産は58.23億元に達しています。

一方、小馬智行は2024年通期の売上高が約3.1億元、2025年上半期は1.8億元未満と報告されていますが、毛利はごくわずかで赤字が拡大しています。Robotaxi車両は約800台保有するものの、実際に商業運転に投入されているのは半数以下です。現金残高は約20億元で、ほぼ前回の資金調達に依存しています。

ビジネスモデルの構造的課題

両社ともに収益は「プロジェクト受注」や「政府・企業向けの車両販売・運用サービス」に依存しており、C端ユーザー向けの持続的なRobotaxiサービスからのキャッシュフローは未だ実現できていません。対照的に、百度が展開する「萝卜快跑」サービスは、2025年9月時点で10都市で800万人以上の利用者、日平均注文数10万件を超え、都市規模での収支均衡に近づいています。

プロジェクト型とプラットフォーム型の違い

文遠知行は中東の政府やUberへの車両・運用サービス提供、小馬智行は広汽やトヨタとの技術供与を主軸にしています。いずれも受注が減少すれば売上が急落する「受注依存型」のビジネスであり、ユーザーリテンションや高頻度・低価格の乗車サービスという本質的なRobotaxiの収益構造を構築できていません。

技術的優位性は壁にならない

両社はL4レベルの純粋ビジュアル認識やエンドツーエンド大規模モデルを掲げ、走行データに基づく安全性指標(千キロメートルあたり0.1回未満の無人介入)を強調しています。しかし、実際の運用では車両が展示用に配置されたり、走行里程が計上されないケースが多く、投資家が評価する「稼働車両数×運行都市数×政策支援度」の指標と乖離しています。

コスト構造の壁

L4 Robotaxi1台あたりのコストは50〜80万元と高額で、保険料や運用人員も多くかかります。文遠知行はボッシュと共同でHPC3.0プラットフォームのコストを30%削減していますが、依然として35万元以下に抑えることができなければ、L2+レベルの自動運転車や一般的なタクシーと価格競争ができません。

政策と市場参入のハードル

現在、Robotaxiが無人で商業運転できる都市は、武汉、深圳、アブダビ、サンフランシスコ(Waymo)およびフェニックス(Cruise)など、全世界で5都市程度です。特にアブダビは外資系Robotaxiが独立運転できる唯一の市場で、文遠知行はUber Autonomousと提携し、100台以上の運行許可を取得しています。

小馬智行は北京亦庄や広州南沙でテスト許可を得ていますが、商業課金は認められておらず、地方自治体のデータ安全性や事故責任に対する懸念が残ります。

競争環境と将来のシナリオ

テクノロジー企業の参入が加速しています。華為(Huawei)や小米(Xiaomi)、蔚来(NIO)は2026年にL2+レベルのエンドツーエンド自動運転を量産化し、数千元の価格で提供する計画です。ユーザーは高価なRobotaxiを待つより、安価でほぼ自動運転可能な自家用車を選択する可能性が高まります。

このため、2026〜2027年までにL4プレイヤーが独自の価値を証明できなければ、Robotaxiは空港や産業団地といった限定的なシーンに留まり、主流のモビリティ手段としては成長が止まる恐れがあります。

経営者のビジョンと現実のギャップ

小馬智行のCEO・楼天成氏はGoogle自動運転部門出身、文遠知行のCEO・韩旭氏は清華大学姚班出身と、技術的背景は非常に高いです。しかし、資本市場は感情や理想ではなく、実際の収益性とスケールを重視します。文遠知行は上場後の資金余裕と海外での実証実績が評価されていますが、売上規模はまだ数千万元レベルにとどまります。小馬智行は技術は優秀でも、資金調達の窓口が閉じつつあり、2026年までに自立的な収益基盤を構築できなければ、事業継続が危ぶまれます。

結論:2025年は試金石、2026年は分水嶺

文遠知行と小馬智行の香港上場は、Robotaxi市場への新たな資金投入を示すものの、実際に持続可能なビジネスモデルを確立できるかは未解決です。政策支援とコスト削減、そして何よりユーザーが支払う価値を提供できるかが、次の数年での勝者を決める鍵となります。

出典: https://www.huxiu.com/article/4802073.html?f=wangzhan